隣のノンケM

隣のノンケM

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内容

★★★★★ 酒を作り直して渡してやると、すぐさま芳山は愚痴をこぼし出した。奥さんに対する愚痴は前から聞かされていたが、Mの話がもう出ているせいか、よけいに「吐き出せた」ようだ。俺は軽く答えてやった。 「そうかなあ、ちゃんと話せばわかってくれるんじゃないか?」 「いやいや。前にちょっとにおわせたり、アレの最中に、いたずらで縛ってみるか?って持ち出したこともあったんだ。そしたらほんとにシラケた顔されてな」 俺はちょっとあきれてしまった。 「いきなり縛ってくれってのはまずいだろ」 「そうか? それにな、他にもう一人男を用意して、3Pなんかしたら興奮するだろって聞いてやったこともあったんだけどな」 「軽蔑されたか?」 「まあ、軽く……」 「お前、3P願望まであるのか」 「え、うん、まあ、やらしいことならなんでもな。ははは」 とてもそんな願望を抱いているようには見えない男なのだ。ごくまともな、女房相手にも正常位一筋って雰囲気の男。それが、妄想だけは突っ走っているのだからギャップが面白い。 「どこかにおれのことをちゃんといたぶってくれる女がいればなあ……」 まるで、宝くじが当たらないかなあ、なんて話している調子だったのだ。だから俺もつい軽口で言ってしまったのだった。 「なんだったら、俺が相手してやるけどな」 「は?」 「いじめられればそれなりに興奮するんだろ。3Pだって三人目は男でもいいと思ってるくらいなんだから、けっこうイケるんじゃないか」 「なに言ってんだよ……」 芳山はまだ笑っていた。だがその後は急に黙り込み、しばらく沈黙が続いた。まずいこと言ったかな、と俺は後悔していた。下手に色気を出したせいで、一気に気持ち悪がられる可能性もある。しかし今さら下手なことを言えばますますドツボにハマリそうだ。俺も黙って酒を飲んだ。するとやがて、芳山が独り言のように言った。 「……試してみようかな」 俺は耳を疑った。だが、芳山はうつむいて酒の入ったグラスを見下ろしている。俺の方を少しも見ようとしないその態度が、冗談で言ってるんじゃないと暗に示していた。 「お、俺はいいぞ、ほんとに。ちゃんと手加減するから、安心していい」 さりげなく、まだ冗談でもすませられるように言ったつもりだった。だが、俺の声は震えていた。芳山もようやく目を上げ、俺を盗み見るようにして、声を震わせた。 「……じゃあ、今度、ほんとに、たのもうかな」 「なんだったら今からだっていいぜ」 「今から、加藤さんと?」 「そうだ」 芳山は怯えたような目つきになっていた。それが合図だと、俺は気がついた。後から考えれば、一か八かの賭けだった。ニヤッと笑ってやると、とたんに芳山は目を逸らし、うつむいて答えたのだ。 「お、お願いします……」 ★★★★★ 隣の部屋に越してきた新婚夫婦。 偶然にも同じ会社の社員で、卒業した大学まで同じだった。 亭主の方はのんびりした雰囲気の、いかにもノンケらしい男。 しかし酒に酔った勢いで、「実はMなんだ」と打ち明けてきて……。 ノンケのM男とのプレイ体験を描いたゲイ官能小説。 初出『Super SM-Z』。

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