のぞき挽歌

のぞき挽歌

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内容

##### 「今日は毛を全部剃ってやろう」 「ダメです。部活の後でシャワーを浴びられなくなる」 「いいじゃねえか。パイパンの股座を柔道部の仲間に見せてやれよ」 のぞきの悦楽を知ったあの夜から、佑介は昼となく夜となく隣室の様子を窺うようになった。男が在宅している気配を感じた時は、あの青年が一緒にいるのではないかと期待しながら、速攻で壁に耳を押し付けて物音を探った。用事もないのにベランダへ出ては、ビルの裏壁しかない景色を眺めるふりをして、仕切り板へ忍び足で身を寄せたりもした。桜が散り、ツツジが咲き、初夏の風が梅雨の曇天に変わった三ヶ月間に、そうやって佑介は何度も興奮し、同じくらい失望もした。 「ケツ穴の周りも剃るぞ」 「勘弁してください」 ベランダの窓の隙間は、最初の夜はわずか三十センチくらいだったけれど、気温が上がるにつれて徐々に拡がり、今では全開のまま放置されていることが多くなった。カーテンも引かれることはないので、室内の様子を隠すものは何もない。無頓着なのか、それともわざと見せびらかしているのかわからないけれど、その開け放たれた窓から幾度となくのぞいているうちに、佑介はふたりのことをほんの少しだけ知ることができた。 「おまえは毛がない方が似合う」 「あふううっ」 ##### アパートの隣室から漏れ聞こえるあえぎ声。それが男同士の隠微な情事だと気づいた時、抑えきれない興奮に惑わされた佑介は、大胆にもベランダへ忍び込み隣室をのぞき込んだ。目前に現れたのは、街で見かけたことのある柔道部の学生が、隣室に住むやくざ風の中年男に尻穴を犯されて悶え泣く姿だった。その狂乱の男色図に酔い痴れた佑介は、それから何度も忍び込んではのぞきを繰り返していたけれど、ある日ついに隣室の男に捕まってしまう。。。 のぞきの背徳感が生み出す強烈な快感と、欲しても手の届かない悦楽を描いた破廉恥極まりない男色ストーリー。(初出:G-men 234号)

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