あるLGBTの伝説 ヴァルター・シュピース: バリにパラダイスと転生を求めた男

あるLGBTの伝説 ヴァルター・シュピース: バリにパラダイスと転生を求めた男

著者

内容

現代バリ芸術の父と呼ばれるヴァルター・シュピース(Walter Spies)は息苦しい文明社会から逃れてバリにLGBTの新天地を求める。,バリの祭事サンヒャン・ドウダリにインスパイアされてマジカルな絵画作品を多く残した彼の伝説的人生をバリ島7年の滞在経験をよりどころにして追いかけてみた。,彼が魅入られたバリのレゴンやケチャ、バリの不思議な現象、マジック、そして多くの著名な作家や学者との出会いを記すことで彼の追い求めたものが何かが浮かび上がってくる。,シュピースのバリ楽園願望は実は遊びの追及であり、その先にある輪廻転生への願望だった。マジカルな作品は彼が見た輪廻転生のビジョンなのだ。,シュピースはギムナジウムを卒業する頃に未来派やキュービズム、表現主義の影響を強く受けシャガールとクレーに惹かれながらも自ら第三の道を探す決意を述べている。彼が追い求めた第三の絵画とは実はそれまで誰も描かなかった、輪廻観の先にあるパラダイスを創造的に描くことにあったと言うことができる。,シュピースの作品や行動は、彼がゲイであることを抜きにしては成立しない。彼はワイマール文化の息苦しさに苛まれた。彼はその長くない人生の最後に同性愛取り締まりで逮捕され、その後敵国人として移送中に日本軍の攻撃とオランダ政府の不作為でこの世を去る。,1920年代から1930年代にかけてバリ島芸術、特に舞踏創作や絵画で活躍しケチャやチャロナラン劇をバリ人とともに創出した。60 年代に再びバリ観光ブームが訪れシュピースとバリ人リンバクのケチャ舞踊はバリ島の代表的な芸能として知られるようになった。ヴィッキー・バウムやミゲル・コバルビアス、デ・ズーテの作品に大きな貢献をするがシュピースは自己顕示を好まなかった。,1995年シュピースの生誕100年に当たりヴァルター・シュピース回顧展がケルンで開かれたがいま一つ盛り上がらなかったと伝えられている。,LGBTに対する世界の見方が急激に変わってきたこともあり、今こそ正当な評価を受けるべきときではないかとひそかに考えたことも執筆の一因だ。それにも増して彼のビジョンの根に「遊び」と「輪廻観」があり、それが一見悲惨な溺死の人生をも輝かしい人生に変える秘密であることを見出したことが著述の強い動機となった。

あるLGBTの伝説 ヴァルター・シュピース: バリにパラダイスと転生を求めた男

最新情報をチェックしよう!